発酵食パワー 06 発酵を促す微生物 04 納豆菌の働き
納豆菌(注・01)とは、枯草菌(こそうきん)という細菌の一種で、
納豆をつくるのに欠かせないもの。
納豆菌は身近な田んぼや畑、枯れ草に存在し、とりわけ稲わらに多く生息しています。
煮大豆に納豆菌を加えると、発酵の過程でたんぱく質を
分解しておいしさの成分アミノ酸を生成し、納豆ができます。
加える納豆菌の種類によって、ネバネバ具合や味、
においなど仕上がる納豆の特性が変わります。
納豆菌は芽胞(がほう)と呼ばれる殻(胞子)をつくるのが特徴です。
芽胞のおかげで乾燥や熱にとても強く、天日干しをしても真空状態でも生き残り、
マイナス100℃〜100℃の環境にも耐え続けることができます。
たとえ、pHが低い酸性条件でも耐えることができます。
このように菌のなかで最強ともいえる納豆菌は時に嫌われることも。
酒蔵や味噌・醤油蔵、パン工房など、麹菌や酵母などほかの菌を扱う現場では、
納豆菌を持ち込まないために納豆を食べてはいけないといいます。
納豆菌は胃酸に負けることなく、生きたまま腸内にたどり着き、
もともといる善玉菌を活性化させ、悪玉菌を抑制して腸内環境を改善してくれます。
また、大豆に納豆菌を加えて発酵させる過程で「ナットウキナーゼ」という
たんぱく質分解酵素を生成しますが、ナットウキナーゼは血栓を溶かして、
血液をサラサラにするはたらきがあります。
さらに納豆菌は骨の形成促進に深く関わる「ビタミンK2」を多く生み出します。
(注・01)納豆菌
納豆菌は、1906年に沢村真農学博士によって発見され、
【Bacillus natto Sawamura】と名づけられました。
その後、1968年に医薬品製造承認、1990年動物用医薬品承認、
1996年飼料添加物許可が取得され、
近年健康食品として利用されるようになり注目されています。
納豆菌は、日本古来の糸引き納豆、ネパールのキネマ(Kinema)、
タイのトウアナオ(Thuanao)など無塩発酵大豆食品を作り出す菌です。
厳密な意味での腸内常在菌ではなく、いわゆる枯草菌の一種で、
内生胞子(芽胞)を持つ、自然界で最も安定した菌種です。
納豆菌は腸内で活性化し、種々の生理作用を現して各動物が本来保有している
有益菌叢(乳酸菌、ビフィズス菌など)を増強、安定化します。
その結果、当然病原菌や腐敗菌などの有害菌は排除されます。
また、抗菌作用が強く、BacilipinやSubtilin等の抗菌性物質を
産生することも知られています。
その他近年納豆菌の抗ガン作用や免疫機能増強作用も報告されています。