発酵食パワー 15 発酵と発酵食品 14 日本酒
米に麹を加えて糖化させ、それを酵母で発酵させてつくられる日本酒は、
米を主食とする日本民族の伝統酒です。日本古語では「酒々(ささ)」、
仏教僧侶の隠語で「般若湯(はんにゃとう)」、江戸時代には「きちがい水」
という別称もあリました。
アメリカでは「SAKE(サーキー)」と呼ばれています。
近ごろは、ビールやワインなど、他のアルコール類に押されて、
国内での消費量は減っていますが、アメリカなどでは
日本食の浸透とともに人気上昇中。
とくに吟醸酒は、その繊細な風味が高い評価を得ています。
一般的な日本酒のアルコール度数は15~16%と醸造酒としては高い部類です。
女性や若者など軽い酒を好む消費者や、輸出を含めた洋酒との競争に対応するため、
アルコール度数がビールよりやや高い程度の6~8%台や、
ワインと同程度(10%台前半)の低アルコール日本酒も
相次ぎ開発・販売されています。
発泡日本酒では5%という製品もあります。
相撲の力士は、肌の色つやがよいことで知られています。
これは彼らが、十分な運動をしたうえで、栄養豊富な食事をしていることに加え、
ふだんから日本酒を多く飲むことにも関連があるというのが定説とされています。
日本酒には、各種のアミノ酸やペプチド、
酸といった身体機能の活性化にかかわる成分が、
ほかのアルコール飲料よりも豊富に含まれています。
これらの働きによって血行が促進され、体があたたまるとともに
新陳代謝が活発になって、肌の色つやもよくなるというわけです。
日本酒の消費量が多い東北地方で肝臓がんによる死亡率が低いのは、
日本酒がもつ制がん作用によるものともいわれています。
さらに、血圧の上昇を抑制するアンジオテンシン変換阻害酵素を含むほか、
善玉コレステロールを増加させる効果も認められており、
高血圧、脂質異常症、動脈硬化などの症状改善にも期待がもてます。
日本酒はアルコール飲料です。
飲みすぎれば、逆に肝臓などに負担をかけます。
日本酒の原酒のアルコール度数は世界の醸造酒のなかでもっとも高く、
22~23度にもなります。
そのため、市販の日本酒は15度前後まで水で薄められたものが
一般的。以前は1級、2級などの等級制度がありましたが現在は廃止され、
原料や製法によっていろいろな種類にわけられます。
たとえば、原料に米と麹と水しか使わない純米酒、
原料米の総重量の10%以内の酒造用アルコールを添加した本醸造など。
最近人気の高い吟醸酒は、とくに高度に精白した米を低温で
長時間かけて発酵させたもので、フルーティーな香りが特徴です。
ビンのラベルに示される日本酒度や酸度は、甘口・辛口の指標となる数字で、
日本酒度はマイナス値が大きくなるほど甘口。
酸度は、数値が大きいほど辛口に感じます。
日本酒の楽しみ方といえば、晩酌(ばんしゃく)に1杯というのが一般的です。
燗(かん)をつける場合、あまり熱くすると風味をそこなうので高くても
50度程度、質のよいものはひと肌程度にとどめたほうが、おいしく味わえるでしょう。
吟醸酒は冷やで飲んだほうが、繊細な香りを活かすことができます。
また、日本酒は調味料として使っても、風味をよくしたり、
素材をやわらかくするなどの効果を発揮します。
調味料として使う場合、貝類、イカ、鶏肉などのように身の締まった
素材のときは料理のはじめから、逆に白身魚のようにやわらかい素材なら、
あとのほうで入れるのがコツです。
このほか、強い酸味や塩味をやわらげるのにも有効ですし、
冷えてかたまったそばに振りかけると、ほぐれやすくなり、香りも引き立ちます。