発酵食パワー 09 発酵と発酵食品 08 マッコリ
マッコリは米を主原料とするアルコール発酵飲料で朝鮮半島の伝統酒の一種です。
アルコール度数は6-8%程度。麹により糖化された
米の強い甘味(甘味料の甘味の場合もあり)があり、
またタンパク質やビタミン類に富みます。
乳酸醗酵により雑菌の繁殖が抑えられる点は日本酒と同じすが、
一般にマッコリでは乳酸菌飲料のような微かな酸味と炭酸発泡の味がより顕著です。
醗酵を止めていないものも多く、醗酵の進み過ぎたマッコリは酸味と炭酸が強烈です。
マッコリという名称が一般化する以前の日本では、
単に「どぶろく」と呼ばれていました。
米が主原料であるものをサル・マッコリ(쌀 막걸리)と呼び、
小麦粉を添加する場合が多く、その他の材料や製法は地域によって多少の違いがあります。
米を主原料としないマッコリの代表例は
サツマイモ(コグマ / 고구마)を主原料とするもので、
これをコグマ・マッコリと呼びます。
江原道や慶尚北道の山間部では
トウモロコシ(玉蜀黍、朝鮮語読みでオクスス / 옥수수)を原料とするものもあり、
これをオクチュ(玉酒 / 옥주)と呼び、
飲む際にはオクチュを注いだ器の中に松の葉を数本折って入れます。
これは松の葉独特の香りがオクチュとよく合うことから、
このような飲み方が好まれるといいます。
2010年には、韓国で「五穀マッコリ」を特許登録したり、
「インスタントマッコリ」を開発して第56回全国科学展覧会に出品、
農水産部門賞を受賞したことが話題になっています。
2011年韓国食品研究院は、マッコリからビールやワインと比較して
10 - 25倍のファルネソールが検出されたとの研究結果を発表しました。
ファルネソールは果実酒の香りの成分で、
アポトーシスを誘発し抗腫瘍作用を持つという研究が報告されています。
韓国ではマッコリに使われる人工甘味料アスパルテームが人体に有害だとして
問題になったのですが、2010年3月、食品医薬品安全庁が
「1日に許容される摂取量を超えない限り問題はない」と公式見解を発表しています。
元々は伝統酒の副産物の沈澱物に水を混ぜて酒として飲まれていたもの(滓酒)が
マッコリであったとされています。
戦後になり朝鮮が独立すると、韓国ではマッコリを扱う酒造会社などが設立され、
安いだけでなく特別なつまみがなくても楽しめたため、
1960年代までアルコール飲料消費全体の60%―80%[29]を占める
大衆酒の地位を得ていたが、1965年、食糧不足により
「糧穀管理法」が改正され、米・麦で酒を仕込むことが禁止されると
マッコリは大衆酒の地位から転落しました。
米国の援助による小麦粉でマッコリの醸造が再開されます。
マッコリ・ルネサンスで若年層にも見直される
真鍮製のやかんとサバル(사발、沙鉢)
韓国では「麹臭い安酒」のイメージもあり、焼酎やビール、
ワインなどに押されてマッコリの消費量は3%程度まで落ち込んでいたですが、
折から韓国政府が韓食の世界化の推進と韓国文化の見直しを進めていたことや、
低アルコール・自然食品で健康に良いといった評価などもクローズアップされ、
韓国でマッコリが再認識されるようになり、
日本のブームが逆輸入される形で、2008年頃から韓国でマッコリブーム
(マッコリ・ルネサンスと称される)が起こったのです。
2010年には、スーパーやデパートでもマッコリと
相性の良いパジョンやキムチジョン、
豚足、スンデ、ガンギエイといった食材の売り上げが伸び、
マッコリと一緒にやかんやサバルに加え、
高級陶器セットや自家醸造セットなども登場していると報じられています。