健康リスクマネジメント 118 病気を予防する 13 予防医学の基本 02 予防医学先進国アメリカ
その後、我が国は高度成長期を経ていわゆる「飽食の時代」を迎え、
便利で食べ物に困らない世の中になりました。
その一方で、少子高齢化などの社会構造、化学物質などによる環境汚染、
また、食べ過ぎ・飲み過ぎ・偏食、運動不足、睡眠不足などの生活習慣の乱れ、
さらには子どもにまで及ぶストレスや慢性疲労の増大など、
生活環境や生活習慣の著しい変化が私たちの健康を蝕むようになっています。
アメリカにおいても 1900年代後半から生活習慣病(当時の成人病)が
国としての深刻な問題となり、1979 年、米国保健福祉局(HHS)が中心となり、
乳児、子ども、未成年、成人、高齢者の5つのライフステージ別に目標を設定した
「ヘルシーピープル」が公表されました。
その後も、10 年毎に実状に合わせて見直され、
国民の間にも広がりながら現在に至っています。
その結果は大きな成功を収め、1994 年頃からがんは減少傾向に転じ、
当時 50%を越えていた喫煙者数も、現在では 20 %以下となっています。
「ヘルシーピープル」は
疾病予防への取り組みとして若い世代の健康への意識を高めるだけではなく、
その成果として医療費の圧迫が軽減され、
高齢者ひとり一人への十分なケアに取り組むことが可能になりました。
このアメリカの経験は、病気になってから治療するのではなく、
健康なうちに、病気にならないよう予防することが、個人が健康に長生きするために、
また、健全な社会のためにも、いかに重要であるかを名実共に教えてくれたとも言えます。
このような、“日頃から病気になりにくい体をつくる”という考え方や、
その考え方に基づいた健康のための実践こそ、“予防医学”の原点と言えます。
日本でも、かつて成人病と呼ばれていた
慢性疾患(高血圧症、2 型糖尿病、高脂血症、動脈硬化症、痛風の原因となる高尿酸血症など)が
1996年に厚生省(現厚生労働省)により「生活習慣病」と命名され、
一般の人々に広く知られるようになり、その対策が講じられています。
そして、2000年からは健康で明るい高齢社会を実現することを目標に掲げた
「21世紀における国民健康づくり運動」、いわゆる「健康日本21」が始まりました。
その骨子は、急速に進む高齢化社会において、
生活習慣を改善して疾病の危険因子を減少させたり、
健康診断等を充実させることによって、
健康寿命を延ばし、生活の質の向上を図ろうという考えで、
まさに予防医学の概念そのものが中心となっています。
しかし残念ながら、この政策は、がん対策等について
未だアメリカの例ほど成功したとはいえない状況です。
【解説】
「マクガバン・レポート」から始まりました。
この記事では触れられていませんが、それは事実です。
日本には国を根底から変えていくものがありません。
また日本で生活習慣病に変えた方は日野原医師であったことも忘れてはなりません。