40日ファスティング経験者の本音!

ファスティング(断食)の素晴らしさやファスティングの正しい方法、効果などを紹介しています。

士道が生まれた背景  39 李登輝の武士道解題 17 第13章・刀・武士の魂 

・・・刀の鍛冶屋はたんなる工人ではなく、霊感を受けた芸術家であって、

その職場は、神聖なところとされていた。彼らは毎日、神仏に祈り、

斎戒沐浴をしてから、仕事を始め、あるいは

「その心魂気迫を打って錬鉄鍛冶した」のである。

・・武士道は、みだりに刀を用いることを認めたのか。

いや断じてそうではない。

武士道は、刀の正当な使用を重んじたが、その乱用をいましめ、これを憎んだ。

その時と場合を心得ずに、刀をふるう者は卑怯者あるいは怠慢な者であるとされた。

冷静な武士は、刀を用いる正しい時をよく知っており、

その時はきわめてまれであった。

勝海舟は、わが国の歴史上、最も騒然とした時代をくぐってきた人物であるが、

当時は暗殺、自殺など血なまぐさい事件が毎日のように行われていた。

彼は一時期はどんどん一人で政策を決定する権力を与えられていて、

何度も暗殺の標的にされたが、一度も自分の刀に血を塗ることはしなかった。

彼はその特徴ある平民的な口調で、一友人に当時のことを次のように語っている。

「私は人を殺すのが大嫌いだ。

一人も殺したことはないよ。

みんな逃して、殺すべきものでも、マアマアといって放った。

・・人に斬られてもこちらは斬らぬという覚悟だった。

なあに、ノミやカにさされてかゆいだけさ。

生命にかかわりはしないよ」。

 

これがあの艱難と勝利のはげしい時代の只中で、

武士道の訓練を受けた人の言葉である。

ことわざにも「負けるが勝ち」という言葉がある。

真の勝利は、乱暴な敵に抵抗しないことにあり、やはりことわざで

「血を流さずに勝つのが最上の勝利である」と教えたのも、

武士道の究極の理想は、結局、平和であったことを示している。

この高い理想が、もっぱら憎侶や道徳家の講釈にゆだねられ、

武士は、武芸の訓練やその奨励を旨としたのは、大いに惜しむべきことである。

これによって彼らは、夫人の理想をもアマゾン的な、

男勝りの性格に色付けさせようとしたのである。

 

【解説】

私はNHKドラマ「塚原卜伝」を100回以上はDVDで見ています。

そこで描かれたのはまさに刀と武士道の神髄を描いているからです。

卜伝の1000日廻廊最終日の夜、

卜伝の持参した刀の上に鹿島の神の霊が宿るシーンです。

この刀は、兵法の刀であり、人を斬る刀ではなく、和解の刀である。

そしてお前に与えたのは、戦わずして勝利を得る刀である」

という神の言葉があったのです。

私はこれぞ武士道の本質を見事に描いています。