健康リスクマネジメント 142 病気を予防する 28 予防医学の基本 17 酒の害 01 少量飲酒のリスク
お酒は「百薬の長」といわれていましたが、
今ではたとえ少量でもNG」と言われています。
それはなぜでしょうか。
2年前に少量飲酒のリスクを指摘する論文が相次いで発表されています。
今回のコロナ禍でリモートワークにより、
自宅にいる分、飲酒しながら仕事できるという解放感で
「お酒は適量飲む分には体にいい」と言い訳して
飲んでいる方も多かったのではないかと思います。
しかし、相次ぐ論文で「適量ならいいだろう」族には
大変、ショックな報告なのです。
海外の研究では、1日平均23g未満で最もリスクが低いと言われていたのは
15年前の研究で、適量20gという指標ができたのですが、
どうもこの基準は、問題があると10年ほどの間に
『少量飲酒のリスク』に特化した研究が増え、その結果、
「基本的に飲酒量はゼロがいい」という驚きの結論が出ました。
ある権威ある論文
(1990~2016年にかけて195の国と地域におけるアルコールの消費量と
アルコールに起因する死亡などの関係について分析)した結果、
健康への悪影響を最小化するアルコールの消費レベルは『ゼロ』であるとしています。
つまり、『全く飲まないことが健康に最もよい』と結論づけられたのです。
ではなぜ、ゼロの方がいいのか?
この研究で飲酒量が増えればがん、結核など他の疾患のリスクは
少量飲酒においても高まっていくので、
心疾患などの予防効果が相殺されるというのです。
この研究で多くの医師・研究者が
『少量飲酒が体にいいとは言えなくなってきた』といえるようです。
飲む人より、飲まない人の方が、
がんの発症リスクが低いということも分かっています。
この結果、酒は『健康にいいから』と大手を振って飲むことはできなくなるようです。
酒量はゼロの方が望ましいものの、日本酒半合、ワイン1杯程度までの飲酒であれば、
リスクは“さほど”上昇しないということだそうですが、
ケンブリッジ大学などの研究では、
19の高所得国の住民を対象とした3つの大規模研究を解析した結果から、
「死亡リスクを高めない飲酒量は、純アルコールに換算して週に100gが上限」
という報告がなされています。
ゆえにアルコール摂取量が週に100g以下の人では死亡リスクは飲酒量にかかわらず
ほぼ一定でしたが、週に100gを超えると、150gくらいまでは緩やかに上昇。
さらにそれ以上では急上昇するということです。
厚労省の健康日本21の指針である
「節度ある飲酒量」の1日当たり20g(=週140g)より、
週当たり40g(日本酒に換算して2合でも数字は多すぎる、
健康に配慮するなら減らす方向か飲まない方がいいということになるのです。
私たちは、このまま日本基準の20gを信じたまま飲み続けていいのか、
やっぱり減らすのか、それとも最近の論文が示唆するように、
いっそのことゼロにしてしまうのがいいのか。
実は酒は世界的に禁酒の方向に大きく変革しようとしています。
では世界のお酒事情を見て見ましょう。