健康リスクマネジメント 80 病気の方程式 71 人類の敵 03 結核菌 01
結核は、明治時代から昭和20年代までの長い間、「国民病」「亡国病」と
恐れられた結核も、国をあげて予防や治療に取り組み
死亡率は往時の百分の一以下にまで激減しました。
1980年代になって、都市化の進展や高まん延であった時代に感染した人々が
高齢化し発病するようになったため、結核罹患率低下が鈍化しました。
1999年には「結核緊急事態宣言」が発せられ、その後罹患率低下はやや回復しました。
欧米の先進国は結核罹患率が人口10万対10以下の低まん延国になっているのに対して、
日本は2017年に人口10万人あたり13.3と「中まん延国」であり、
16,789人の患者が報告されています。
一般の人のみらなず医療従事者も結核への関心が低下しているために
発見が遅れる場合があり、集団感染の原因になっています。
大半を占める高齢患者は典型的な症状がないために診断が遅れることがあり、
重篤な合併症を持っているために、しばしば予後不良になります。
近年は若年者を中心に外国出生の患者が増加しています。
結核菌はブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説によれ
ば次のように説明されています。
・・・ヒトに結核を起こす病原菌。1882年ドイツのロベルト・コッホにより確認された。鞭毛はなく,芽胞や莢膜もつくらない。グラム陽性であるが,マイコバクテリウム属の細菌の特徴である抗酸性という性質をもっているので,抗酸菌とも呼ばれる。菌体外毒素は産生しないが,培養液中には抗原性のある蛋白質成分が蓄積し,この培養ろ液を濃縮したのがツベルクリンである。ヒトに結核を起こす菌種(ヒト型結核菌)のほかに,ウシ型 M. bovis,トリ型 M. avium などが区別される。結核予防ワクチンである BCGはヒトに病原性を失ったウシ型結核菌の変異株である。・・・
また結核予防協会研究所のサイトから「結核に知識」を抜粋しておきます。
1:結核とは
結核とは「結核菌」という細菌が直接の原因となって起こる病気で、
結核菌が起こす「 おでき」のようなものと考えていいでしょう。
最初は炎症から始まります。肺ならば肺炎 のような病気です
(肺の表面近くに病巣ができれば、
炎症の結果生じた浸出液は肺を包ん でいる胸膜からしみ出して胸膜炎となります)。
結核菌は肺に巣食うことが多いのですが、
人体のいろいろなところ(臓器)にも病気を起こします。
初期の炎症が進むと、やがて「化膿」に似て組織が死んで腐ったような状態になり ます。
この状態の時期が肺結核ではかなり長く続き、
レントゲンなどに写る影の大半がこ の状態の病巣です。
その後死んだ組織がどろどろにとけて、気管支を通して肺の外に排出 されると、
そこは穴のあいた状態になります。
これが空洞です。
空洞の中は空気も十分にあり、 肺からの栄養もあるので
結核菌には絶好のすみかとなり、菌はどんどん増殖します。
空洞をもった結核患者が「感染源」になりやすいのはこのためです。
このような病巣からの菌が肺の他の場所に飛び火したり、
またリンパや血液の流れに乗ったりして、
他の臓器に結核の出店を作ることもあります。
こうして結核は肺全体、全身に広がって行きます。
そして最後には肺の組織が破壊されて呼吸が困難になるとか、
他の臓器の機能が冒されるとかして生命の危機を招くことになります。