ヒルデガルトファスティング 14 現代に生きるヒルデガルト 10 神から来る幻視
その人物（フォルマール修道士）が（非常に）忠実で、
私のために働いていることを認めたのである。
これは私の隠れた神秘が明らかにされるためである。
その者（フォルマール修道士）は、自分に閉じ籠って拒絶せず、
謙虚を深め、熱意を強めているあいだいにみつけたこの人物を
しばしばため息をつきながら頼みとした。
したがって、ああ、人よ、おまえは、隠れていたものを明るみに出すために
語られた事柄を、欺かれるではないかという不安ではなく、
ただ純粋に受け入れ、見聞きすることを書き記しなさい」（編集者注・01）
さらに続けて、「しかし、私はこのことを見聞きしたにもかかわらず、
疑い、間違った見解を持っていました。
また、人間的な言葉の相違ゆえに、その間、ずっと、頑なさではなく、
謙虚さから、病気でやむを得ず、床に就くまで、書くのを拒絶しました。
天罰を受けて、多くの病気で苦しんでいたのです。
しかし、行いの良い貴族の娘（注・02）と
内密におあいしたかの人物（注・03）に相談し、
お二人の判断に従って、調べ上げ、理解した事柄を書き始めました。
書いている間にも、お話ししましたように、
これらの書き物の奥深さを感じ取り、病気が治り、体力を取り戻しました。
なんとかこの仕事を終わりまで続けることができましたが、
それに10年を要しました。
ドイツ王コンラート、聖ディジボート第修道院院長クーノの時代、
教皇エウゲニウスの御代に与えられました。
私は語り、書きました。誰かほかの人や私の心が求めるものに従ってではなく、
幻視によって見たまま、神の隠れた神秘を聞き、知ったままです。
そして、また、『天の声が落ち着いてこう書きなさい』と語るのを聞きました。
（編集者注・01）
ヒルデガルトが５歳から見ていた幻視は、幻覚とは全くことなり、
神からの啓示なのです。
日本では、レビー小体型認知症でみられる主な症状の中に
「幻視」という説明はなされていますので、勘違いしないようにしてください。
行いの良い貴族の娘（注・02）
家庭教師ユッタのこと。ユッタはディジボーデンベルク近くの
シュポンハイム城の貴族（シュポンハイム伯シュテファン1世の娘）で、
兄弟にケルン大司教フーゴー・フォン・シュポンハイムがいる。（ウィキ）
おあいしたかの人物（注・03）
ヒルデガルトの教育にはザンクト・ディジボード男子修道院の修道士フォルマールが加わった。
そのザンクト・ディジボード修道院は、
アイルランドの聖コルンバ系修道士ディジボードが
700年頃にこの地に教会を建設したのが始まり。
16世紀の半ばに戦争や略奪で破壊され、現在は史跡として残されている。
聖ディジボードの名前はヒルデガルトの記述によってのみ知られているに過ぎない。
（ウィキ）
